精子の道のり 精子が卵子と出会うまでには’どれくらい時間がかかる?

精子の道のり 精子が卵子と出会うまでには’どれくらい時間がかかる?

一九九八年、アメリカで「人工授精」の歴史に新たなぺージが書き加えられた。ロサんゼルセ市内のセンチユリーシティー病院の医師らか急死した男性の遺体から家族の希望で精子を抽出し、冷凍保存したのち、妻の卵子と人工授精させることに成功したのだった。

この出来事は、精子が体の中でもつとも生命力の強い細胞であることの証明であり、心臓が亭止したあとも、精子だけはしつかり数時問は生きていることの証左だった。

では、女性の腔内に射精された精子はどれくらいの問生きているのだろうか?驚くなかれ、精子は女性の体内で三〜四日問は生きている。膣内で放出された二〜三億もの精は、先を争うように膣の内部へと進んでいく。しかし、その道には障害がいつぱいで、精子の受精への旅はとても順風満帆とはいえない。おまけに、あろうことか女性の白血球は精子を食べに集まつてきさえする。

こうした困難の中で、精子は一分問に三〜六iという速さで泳ぎ続け、膣から子宮頸部(腔と子宮をつなぐ宵)にまで進み、さらに卵管を上り、受精が行なわれる場所である卵管膨大部(卵管が太くなっている部分)へと向かう。子宮から卵管膨大部までの距離はおよそ一八cmなので、動きの速い稍子は子宮の入り口から受精ポィントまで約三十分ほどで到速することができる。

といっても、受粘ポィントである卵符膨大部に卵子がいなければ、もちろん受精はできない。粘子はそこでウロウロと恋しい卵を待つことになる。

1方、卵子はといぇば、月に一個の割合で卵巣から排卵されるものの、精子とは違って、卵染から排卵されるや、二十四時問以内に精子と出会わなければ死んでしまう運命にある。一説には、排卵から八時冏後には早くも老化しはじめるともいわれ、いずれにしても#命は短い。となると、受粘のチヤンスを得るための所要時問を逆算してみると、排卵四日前から排卵後の二十三時問三十分前までに男性が射精しなければ、妊娠にはいたらないという計算になる。

ところで、精子はどうしてオタマジヤクシのように尾を振って活発に泳ぎ、また四日問も生きながらえることができるのだろうか?精子は卵管膨大部へ到達するまで、二万回以上も尾を振るといわれる。やっぱりオタマジヤクシと同じような体の構造をもっているのだろうか?

精子の形はオタマジヤクシと似てはいるものの、もちろん、体のつくりはまっヒく違う。精子には心臓や肝臓といった内臟があるわけでもなく、エラにあたる呼吸器官があるはずもない。なぜなら、精子は一個の細胞からできている存在だからだ。

精子の大きさは長さ〇•〇五〜〇•〇六|で、大きく分けると頭部と尾部からなっている。頭部には核があり、その中には男性の遺伝子を積んだ染色体がおさめられていて、これが卵子の中に入り込めばめでたく受精となる。そして、長い尾部は鞭毛で、オタマジャクシがそうするように左右に振ることで前進することができる。

しかしよく見厶と、尾部の根元にはふくらんだ部分があって、じつはここに精子が運動するためのエネルギー供給源がある。その正体はミトコンドリアという、体のほかのすべての細胞にも含まれている細胞内器官で、ATP(アデノシン三リン酸)という物質をつくつている。ATPという物質はエネルギー貯蔵庫ともいえるもので、手軽に分解され、そのときに放出される化学エネルギーが精子の運動エネルギーに変換されているのだ。また、女性の卵管からの分泌液も精子のエネルギー源となつている。肉眼では見えない極小の精子も、生き残つて受精という目的を采たすため、いじましく努力をしているというわけだ。

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